2025/11/11 10:18
いつも Barkoutsiders をご覧頂きありがとうございます。
気づけば今年も残りわずか。
この1年を通して、自分たちが“時間”とどう向き合ってきたのか――そんなことを考える季節になりました。
昨年末に販売させていただいた 「HOWL 001」 は、限定100本すべてが年内に完売し、販売後も多くの反響をいただきました。ドレスウォッチのような上品さと、カジュアルウォッチのようなラフさを併せ持つデザインは、これまで機械式時計に親しんでこられた方々にも新鮮に映ったのではないかと思います。

私は腕時計というプロダクトを通して、機能や文化の背景を紐解き、現代的な解釈で再構築することで新しい魅力を生み出せるのではないかと感じています。
“シンプルで丈夫”、“程よい価格帯”、そして どこか“道具を選ぶ感覚”で手に取ってもらえる時計。
そんなコンセプトを軸に、NAVAL WATCH さんと共に「HOWL」ラインを続けていきたいと考えています。
自分の持ち物ひとつひとつにこだわりを持ち、選び抜く楽しさを知っている大人の方々の毎日に、少しでも気持ちを高めてくれるような腕時計をお届けできたら嬉しく思います。
そして今回の 「HOWL 002」 は、これまでお会いした皆様の声をもとに、
ハイエンド・ミリタリーウォッチとしてさらに磨きをかけた自信作です。
この一年間、じっくりと時間をかけて作り上げてきたプロジェクトですので、ぜひご覧いただけたら幸いです。

どうして今、“ベトナムウォッチ”なのか。
そこには、僕自身が長年感じていた小さな違和感を形にしたいという想いがありました。
ベトナムウォッチは市民権を得た普遍的なスタイルであり、いわば “キング・オブ・ミリタリーウォッチ” と呼べる存在です。簡単に触れると、60〜70年代のベトナム戦争期にアメリカ軍が複数の時計メーカーへ要請して兵士に支給した腕時計がルーツで、低コストでありながらフィールドに適したデザインや機能を備えた、まさに道具としてのミリタリーウォッチです。
個人的には、ビンテージの個体がまだ手の届く価格帯にある点や、現代の復刻モデルにその血統が色濃く受け継がれている点に魅力を感じています。
ですが、実際に比べてみると同じ“ベトナムウォッチ”の括りでも、ケースの材質や形状、ムーブメント、仕上げなどの違いで印象はまったく異なります。ブランド側はそれらによって立ち位置を作り、コストや製造の制約も当然影響します。

消費者目線だと選択肢は多いものの、マーケティングの言葉に導かれると「鰻屋で松・竹・梅を選んでいるような」感覚になることもあります。条件にフィルターをかけていくと、消去法でハミルトン一択になってしまう――そんなジレンマを何度も感じてきました。
僕はこれまで「Swatch Groupでできることは多くをNAVAL WATCHでも実現できる」と言ってきました。だからこそ、これまで抱いてきたモヤモヤを HOWL 002 に全力で注ぎ込みたくなったのです。
しかし、プロダクトを作る立場からすると、“ベーシック”ほど作るのが難しいことも痛感しています。どこまで忠実に過去を再現するのか、どこまで現代性を取り入れるのか――その線引きが今回の大きな悩みどころでした。

そんな背景を踏まえて、僕らがいまの時代に再構築したのが「HOWL 002」です。
ここからは、その全体像とオリジナルのルーツを少し掘り下げてご紹介します。
オリジナルのベトナムウォッチは、34mm径の小ぶりなサイズとアルミケース+手巻きムーブメントによる軽量設計が特徴でした。
激しい戦闘やフィールドでの動きを想定し、ケースは薄く、裏蓋は爪式(スナップバック)。ナイフやコインで簡単に開けてメンテナンスできるようになっていたのは、まさに“道具”としての合理的な設計思想からです。
また、コストを抑えながら使い捨ても想定された、いわば「ミリタリーの現場で使い切る時計」だったとも言えるでしょう。

蓄光塗料をアワーマークと針に塗布し、夜間の視認性を確保。
マット仕上げのケースやブラックのインデックスは、反射を防ぎ敵に位置を悟られないようにするための工夫とも言われています。
さらに、部隊全員で時刻を合わせる際に合図として使われた「HACK(ハック)」という言葉に由来し、
**リューズを引くと秒針が止まる“ハック機能”**を備えていることも、このモデルを語る上で欠かせないポイントです。
■ HOWL 002 の基本設計
今回のHOWL002は38mm径。
昨年からやや小ぶりな36mm径のクラシカルな時計のトレンドが出てきていますが、長期的な目線では38mm径というのが最もベーシックだと考えています。
素材にはステンレススチールケースを採用し、ムーブメントは自動巻き。
この組み合わせにより程よい厚みと重さを持たせ、装着時にしっかりとした存在感を感じられるようにしました。

本体ヘッドの重さは約58g。比較として、同径の「Hamilton Khaki Field Mechanical」は46g、前作「HOWL 001」は64gであり、その中間に位置する絶妙なバランスです。
付属ストラップには、先日リリースした Genuine Nylon NATO Strap(Coyoteカラー) を採用。
このカラーリングは、ベトナムウォッチのミリタリーDNAを忠実に受け継ぐ選択であり、HOWL 002の世界観を象徴する要素となっています。
全体として、日本製のウォッチ本体とナイロンストラップのコンビネーションによって、
現代的な品質とベトナムウォッチの本質を両立させることを意識しました。

HOWL 002は、オリジナルが持つ道具としての合理性や美しさを尊重しつつ、現代のライフスタイルに溶け込むバランスを探りながらデザインしています。
それでは、ここからは各ディテールをさらに掘り下げてご紹介します。
ディテールの構成は「ケース」「ムーブメント」「インデックス」の3部構成でお伝えしていきます。
まずケースには316Lステンレススティールを採用。
高級感と堅牢性を両立しながら、マットブラスト仕上げによって反射を抑え、傷も目立ちにくくしています。まさにミリタリーウォッチらしい、実用性を重視した仕様です。

リューズには、ナバルウォッチのブランドロゴであるブロードアローを凹凸で表現しました。
無駄のないフォルムの中にこのシンボルを際立たせることで、ハイエンドラインとしての存在感を引き立てています。
背面のケースバックは、今回特に時間をかけた部分です。
形状・刻印・スクリューバック構造、そのすべてにこだわりました。
ラウンド状にテキストが配されたケースバックは、GG-W-113の原型にあたるMIL-W-3818に見られる特徴であり、深いエッジングによる刻印の存在感に強く惹かれてきました。
本来はワンピース構造で表側からしか開けられない設計でしたが、今回はスクリューバック構造へ変更。
防水性を高めながら、修理やメンテナンスもしやすい仕様へと進化させています。
また、今回も100本のシリアルナンバーや生産年月が入ります。振り返った時にこの時計の販売されたタイミングと皆様のライフステージを重ね合わせて確認出来るように致しました。

ムーブメントにはTMI社のNH38を採用。
自動巻きの3針ノンデイト仕様です。
当初、NAVAL WATCHの祐辻さんへこのムーブメントを提案した際、供給量の少なさから一度は見送られました。
それでもこのムーブメントにこだわった理由は、“ゴーストデイト”と呼ばれる現象を避けたかったからです。
これはリューズを一段引いた際、日付表示がないにもかかわらず、内部のデイト機構が“カチカチ”と空回りしてしまう現象のこと。
構造的にはシンプルで、壊れにくく、修理しやすいという点もこのムーブメントの魅力のひとつです。
続いて、最も悩んだのがインデックスです。
ここまでお読みいただいた方には、いかに忠実に、そして誠実に“正統”を追求してきたかを感じていただけたと思います。
文字盤は時計の印象を決定づける要素でもあるため、特に慎重に検討を重ねました。

当初はヴィンテージ加工を施す案もありましたが、技術的な制約もあり、最終的に現在の仕様へと落ち着きました。ポイントは、秒刻みの線を細く仕上げ、クラシカルな印象を出すこと。黒と白のコントラストを強くしすぎず、時分針の蓄光塗料をアワーマークよりわずかに濃くすることで、経年変化で焼けたようなヴィンテージの風合いを表現しています。
さらに風防にはサファイアドームガラスを採用。
膨らみをもたせたドーム型の風防は、光の入り方を柔らかくし、クラシカルで豊かな表情を与えます。
非常にコストのかかる仕様ですが、ハイエンドラインとして相応しい仕上がりになっています。
せっかくBarkoutsidersが手がける時計ですから、身につけた瞬間に、ヴィンテージならではのアナログ的な豊かさを直感的に感じていただきたい。
その思いを胸に、HOWL002のディテールをひとつひとつ丁寧に形にしました。
細部までこだわり抜いた設計や仕上げは、写真だけでは伝わりきらない部分も多いかもしれません。
ぜひ実際に手に取り、その質感やバランスを感じていただければと思います。
以下に、販売時期や取扱いイベントの詳細をご案内いたします。

今回のモデルは 限定100本のみの生産 となります。ウェブでの受注販売は 12月25日(クリスマス)に一斉スタート いたします。お届け時期は 2026年2月〜3月頃 を予定しておりますので、あらかじめご了承ください。
クリスマスプレゼントには少し間に合いませんが、
新しい年度に向けて腕時計を新調したい方には、きっと特別な一本になると思います。
価格は昨年同様の ¥121,000(税込)。
このモデルのために専用の型を一から製作し、
さらにサファイアドームガラス風防など、素材・設計ともに非常に贅沢な仕様となっています。
価格以上のつくりを実感していただけるはずです。
また、「ウェブ販売のみでは実際の質感をお伝えしきれない」との思いから、
ZABOU様のご協力のもと、東京と大阪の2店舗でPOPUPイベントを開催いたします。

【POPUP開催期間】
NAVAL WATCH × Barkoutsiders “HOWL002” POPUP
• 11月22日(土)〜 11月26日(水)ZABOU 銀座店
• 11月29日(土)〜 12月7日(日)ZABOU 大阪店
※11月22日(土)および12月6日(土)は、私・森田が在店予定です。
BLOGで触れたようなディープな内容を直接お話しできればと思いますので、ぜひお立ち寄りください。
会場では HOWL002の受注予約 に加え、
昨年のHOWL001の展示 や NAVAL WATCHのラインナップ も一堂にご覧いただける、貴重な機会となっています。
各取扱店様にも予約数の上限がございますので、販売店リストなどの詳細は後日ホームページにて掲載予定です。
このコラボレーションウォッチをご案内していると、
「今年も一年が早かったな」と、自然と年の瀬を感じてしまいます。
ぜひ、2025年の締めくくりに“HOWL002”をご覧ください。
手に取った瞬間、その静かな存在感が、きっとあなたの“時間”の感覚を少し変えてくれるはずです。
#GG-W-113
#MIL-W-3818
#NAVALWATCH
#Barkoutsiders
#HOWL002
#HOWL002ブログ
#Hamilton
#ベトナムウォッチ
#VietnamWatch
#ミリタリーウォッチ
#MilitaryWatch
